| 1-F-5-6 | 第17回医療情報学連合大会 17th JCMI(NOV,.1997) |
○岡田 武夫 , 松村 泰志 , 桑田 成規 , 岡本
裕司 , 中村 考志 , 中野 裕彦 , 武田 裕
大阪大学医学部付属病院 医療情報部
Monitoring of adverse drug effect through the
Clinical Database System
○Takeo Okada , Yasushi Matsumura , Shigeki
Kuwata , Yuuji Okamoto , Takashi Nakamura , Hirohiko
Nakano , Hiroshi Takeda
The Department of Medical Information Science, Osaka University Medical School(okada@hp-info.med.osaka-u.ac.jp )
Keywords: database, leukocytopenia, adverse drug effect
薬剤の副作用の一つとして、白血球減少症は重要である。しかし、複数の薬剤が投与されている場合は、原因薬剤を特定することは困難である。そこで、処方歴を検索し、多数例を比較検討することで、原因薬剤に特定することが可能になるのではないかと考えた。さらに、血液検査の結果で白血球減少が示唆された時点で、原因薬剤と疑われる薬剤を自動的に提示できるシステムを開発すれば、診療面でも大いに有用であろう。
我々は、昨年、疾患ごとの薬剤の投与頻度を調査することで、ある疾患の治療薬を推定しうることを示した1)。今回は、同様の手法で副作用に関連のある薬剤を抽出しようと試みた。
白血球減少症と薬剤との関連を見るため、診療データベースで検査結果と処方歴を検索しうる1995年9月より1996年4月までを検索の対象の期間とした。この期間の外来患者及び入院患者の合計59,707人を検索対象とした。
今回は予期されない白血球減少症をも検索するために、前後2回の検査結果を比較して、前回検査よりも白血球数が50%以下に減少した症例のみを白血球減少症と見なした。
白血球減少症には、再生不良性貧血や抗ガン剤が投与されている症例など、白血球減少が必至と見られる症例が多数含まれている。そこで、再生不良性貧血や悪性新生物の病名を持つ症例を除外した。
抗ガン剤の使用時や血液疾患で輸血を繰り返している症例、手術などによって白血球減少を来した場合は、白血球減少が予期されているため、頻回に血液検査が施行されているものと推定される。今回は、異常が生じた検査とその前回の検査の間隔が1週間以上開いている症例のみを選択した。
異常が確認された時点で服用していた薬剤のリストから正常が確認された日から1ヶ月前の時点で服用していた薬剤を除いたものを、白血球減少症の原因薬剤の候補と考えた。
白血球減少症を惹起する薬剤では、その投与症例での白血球減少症の出現頻度が、そうでない薬剤の投与症例での出現頻度と比較して、高いものと考えられる。そこで、白血球減少症例に投与されていた薬剤の投与患者数を調査し、病院全体での投与患者数との比率を算出した。この薬剤ごとの白血球減少症の出現頻度と、薬理学的に白血球減少にほとんど関与しないと考えられる薬剤での白血球減少症の出現頻度をカイ2乗検定を用いて比較検討した。
検索の結果、我々の定義による白血球減少症の症例は63例あった。これらの症例について検索したところ、原因薬剤の候補とされた内服薬は合計459種類あった。この63例に対する投与頻度は、
H2-blocker(薬剤コード231290)が100%、緩下剤(221350)が90.5%、抗生剤(225400)が87.3%の順であった。
これらの459種類の内服薬の1995年9月より1996年4月までの全患者に対する処方例数を検索し、候補薬剤ごとの白血球減少時の処方患者数の同期間における全処方患者数に対する割合を求めた。
上記の薬剤のうち、比較的多数の患者に投与されていて、かつ薬理学的に白血球減少整腸剤(237650)を選択した。この薬剤は940人に投与されており、うち白血球減少患者は8人(0.85%)含まれていた。
そこで、投与患者数に対する白血球減少患者の比率が0.85%を上回る薬剤について、カイ2乗値を計算した。カイ2乗検定により危険度5%で白血球減少患者の出現率が薬剤237650を上回ると判定された薬剤は6種類であった。その結果を表1に示す。これら6種類の薬剤について、以下の検討を加えた。
薬剤225400と薬剤233110は抗生剤であった。この2剤が投与されていた症例においては、白血球減少は、薬剤による治療の効果であるか、あるいは、白血球減少が予期されていたために予防的に投与されていたか、そのいずれかである可能性もある。
利尿剤細粒(233830)とH2-blocker散(231300)は、それぞれ同一内容の錠剤があり、これと合算すると白血球減少症の出現比率は前者では1.1%、後者では0.5%と減少し、カイ2乗値もそれぞれ減少して白血球減少症の出現頻度が有意に高いとは言えなくなった。これらの薬剤の成分が白血球減少に関与しているとは言い難い。細粒あるいは散剤という剤形が、自力で服用できないなど特定の病態の患者に偏って投与されている可能性がある。その結果として白血球減少症の出現比率が見かけ上、高くなっているものと思われる。
免疫抑制剤(234810)は、その副作用として再生不良性貧血、白血球減少症などが知られている。今回の調査では全投与症例の2.8%に白血球減少症が出現しており、この薬剤本来の副作用が出現しているものと考えられる。
循環器用薬(218860)は、元来、白血球減少など重篤な副作用の存在があまり知られていない薬剤であるが、今回はその投与症例のうち6例(1.9%)に白血球減少症が見られた。このうち1例は高尿酸血症、1例は脳梗塞の患者で、この2症例では投与が続行されたにもかかわらず、白血球数は正常に復帰していた。また2例は敗血症を起こした経過中の白血球減少と考えられた。他の2例については、白血球減少を来す明らかな理由が見あたらなかった。
他の薬剤については、時間的な制約から詳細な病歴の調査を行っていないが、今後はそれらの症例についても、詳細な病歴の調査が必要であると考える。
白血球減少症の出現頻度から、白血球減少症との関連性を示唆する薬剤を抽出できた。しかし、白血球減少症の原因薬剤の確定は出来ず、さらなる分析が必要であると考えられた
1 岡田武夫他:診療データベースを用いた疾患ごとの薬剤使用実態の分析:第16回医療情報学連合大会論文集、192-192、1996