仮想現実医学の新たな展開
○田中 博
東京医科歯科大学情報医科学センター
New Rends in Medical Vurtual Reality
○Hiros Tanaka
University Center for Information Medicine, Tokyo Medical and Dental University
(tanaka@cim.tmd.ac.jp)
Abstract: In this presentation, first, recent advance of the VR in medicine (virtual bio-reality) is reviewed. We introduce new VR application such as medical tele-existence and extended bio-reality. Then, secondly, we describe our computer aided brain surgery system using virtual reality techniques. This system comsists of main image processing unit (Onyx reality engine2), equipped with 3D coordinations sensors attached to a tip of "virtual" surgical knife, and several points on data glove. A head mounted display provides a 3D image as an output of the image. In VR processing program data input modules get 3D coordinates of head geometry, tumor one, location of hand and extension and flexion of each finger. Brain surface, venus and tumors are detected from 3D data to CT or /and MRI. The brain surface is cut by "virtual knife" and venus and tumor are displayed. To support the decision for the operational strategies, see-through display is equipped
Keywords: Virtual bio-reality, medical tele-existence, extended bio-reality
1. 仮想現実医学の新たな展開に向けて
MRI、XCTなどから得た患者の3次元形態データに基づいて、計算機によって再構成された患者の仮想現実生体を用いる医学は、これまでのような形態情報だけでなく他の機能情報も取り入れることによって、単なる支援技術ではなく、それ自身1つの医学分野へと拡張しつつある。この医学は、患者だけでなく患者と形態的あるいは機能的に等価な仮想生体(Virtual Bio-reality), が存在し、これらは完全に連動している。これは医療の対象は従ってこれを新たな医学分野、仮想現実医学あるいは生体仮想医学として呼ぶことが適当と思われる。幾つかのVirtual Bio-realityを用いた新たな研究の方向を取り上げよう。
(1)遠隔仮想医学(Medical Tele-existence)
この展開は現在、通信技術と連動している。とくにインターネットや高速マルチメディアネットワークとの相互的な発展が期待される。この概念はいわばMedical Tele-existenceと呼ばれるもので、VR技術と大容量高速通信技術の結合によって可能になったものである。これまでの遠隔医療が単に画像伝送−画像遠隔診断に限定していたことを考えるとこれは遠隔操作を自己の現場で行うことと考えられる。遠隔内視鏡操作、遠隔手術などが現実の課題としてされている。
(2)拡張生体医学(Extended Bio-reality)
生体を忠実に再現することだけが仮想現実医学の課題ではない。むしろ現実の生体にはない特性を持ったBio-realityを構成することによって疾病の診断、治療を支援できよう。例えば仮想生体上に生理的機能情報を色彩表示した患者仮想体に手術をすることは付加情報を持った患者仮想体が出来る。これまでも試みられている井関らのシスルー型VR手術支援Augumented Realityの延長にあるものである。
,go>(3)仮想病院化(Virtual Inter-hospitalization)の促進
仮想生体医学は「患者の臨在を必要としない医学」を可能にする。これは近年ネットワークを介して病院の部分機能が結合し「ネットワーク上に存在する」病院すなわちVirtualHospitalやInter-Hospitalと呼ばれているものとネットワーク上に仮想生体を共有することによって可能なInter-Hospitalizationを促進する。
そのほかにも教育、手術トレーニングなどに新しい傾向も現れている。
2. 実例:脳外科手術システムの構築
ここで現在の仮想医学の実例として我々の教室で行っている例を紹介する。本システムはCTまたはMRIデータから3次元表面モデルを作製し、バーチャル・リアリティーを利用した手術シミュレーション・システムである。本システムは医学生の教育、患者へのインフォーム・コンセンサスをはじめ、脳手術の方針決定などに応用する事を考えている。システムは、まず(1) 3D画像を高速に処理、表示するためにグラフィック用の高速コンピュータを装備し、MRI、CTなど3Dデータを入力・変換するソフト・ウェアを装備した。また3D画像を表示するためにHMDや3D表示装置を装備した。次に(2)3D画像の臨場感を改善するために各ボクセルの色、光学的性質などを改善した。触診の模擬のために各ボクセルに機械的性質を持たせ、また、その表現のために、力学ディスプレーなどを応用した。
2.1 ハードウェア
SGI社製のOnyx Reality Engine 2を中心に入出力装置を増設した。入力装置は3次元座標を計測するPolhemus社製3Space Fastrak磁気センサーである。通常の角型標準レシーバに加えて、手術用メスの模擬を行なうためにペン型のスタイラス・レシーバも用意した。また、手指の屈伸を計測する日商エレクトロニクス社製Super Gloveを左右一対装備した。出力装置はHMDとしてV RS社製VR4を装備した。Onyxシステムの接続はSGI社製Multi Channel Option(MCO)を用いモニター画面の特定部分をVR4内の左および右ディスプレーに表示する方法とした。また、複数の観測者が容易に立体データを確認するためにStereo Graphics社製Crystal Eyes2も装備した。
2.2 ソフトウェア
AVS Medical Viewerのもとで処理プログラムを作製した。 今回これに加えた処理プログラムは入力処理で、頭部の3次元座標データ、腫瘍の座標データ、磁気センサの座標入力、Super Gloveの手指屈伸データの取り込みである。
頭部の3次元データはバイナリ・データとして読み込まれる。次に、表示する有効部分を選択する。この設定により3軸(x,y,z)方向と垂直な面での断面を設定することができる。任意の方向でのくり抜き処理を行なう部分を3次元表示部分へ送り表示する。一方、頭部の3次元データは垂直軸に直交する断面の2次元データとして生成される。次に着色を行ない、頭部の断面像として表示する。断面内で位置を指示することにより直ちに、対応する空間内の点が頭部3次元表示内に示される。腫瘍データは頭部データとは別のファイルからバイナリ・データとして読み込まれる。表示速度を向上するためにデータを間引き、閉曲面データとして生成し、3次元表示を行なう。磁気センサの出力の内、手の位置に関するデータは、Super Gloveのデータに加えられ、3次元表示される。本システムでは、指の屈伸により、表示の回転、拡大縮小、精度の調整を行なう。この制御のための部分を通してくり抜き部分とデータを間引く部分を制御する。くり抜き操作を行なう場合は、磁気センサの内、スタイラスセンサーの位置とボタン操作によりメスを生成し、その座標も数値として生成する。くり抜く位置が表示されると、くり抜き処理部分によりデータを0にし表示を制御する。
2.3 操作方法
AVS起動後データ処理・表示用のネットワークを呼び出す。頭部の3次元データおよび断面像が表示された後、Super Gloveの指示により適切な視野を確保する。Super Gloveにより対象の回転、拡大縮小、透過率、表示精度と、くり抜き操作を選択し、同Super Gloveを空間内で移動・回転し調節する。表示の調整を行なった後に3次元画面内で標的を指示し、スタイラス・ペンを用いて目的の部分をくり抜く事が出来る。また、表示モデュールの機能により、直ちにCrystal Eyes2を用いた3D表示を行なう事も可能である。
2.4 展望
今後、臨床的に重要な触診のシミュレーションのために、力学ディスプレイ、触覚ディスプレイの応用を試みると共に、ユーザ・インターフェイスの改善や処理速度の改善を行ない、より使い易いシステムとして行く予定である。
図表
図1、脳外科手術バーチャルリアリティシステム
図2、切開した頭部の3次元画像
参考文献
H.Tanaka,H.Nakamura,et.al:Brain Surgery SimulationSystem Using VR Technique:In Computer Assisted Radiology and Surgery(CAR 97), 1042, Excerta Medica, Elsevier,1997
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