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医療情報技師とは

医療情報技師 医療情報技術の専門的人材として

 一般社団法人日本医療情報学会 ※2009.6.より名称変更
2004.03.01.
1.医療情報システムの問題点
 近年,病院情報システムの導入が著しく進んでいるにもかかわらず,医療改革に必要な医療サービス等の内容を明らかにするデータを出せる医療機関が極めて少ないのが,わが国の現状と言えます.このような事態が生じている理由として,

1) 医療サービスの内容等の評価基準が明確に提示されていないこと
2) 現存する多くの医療情報システム(電子カルテとよばれるシステムを含む)とそのデータベースが,種々の評価指標等のデータを出せるように作られていないこと
3) 医療機関内で,それに対応する専門組織,情報管理体制が未整備であること
4) 情報システムの企画,開発と運用を担当し,かつ有効に利活用していくことのできる専門性と使命感,資質のある情報処理技術者が,医療機関にも,情報システムを提供する企業側にも極めて不足していること
5) 医療情報システムの導入にあたって,医療機関側の技術力不足により,医療情報システムを提供する企業側に問題を提示できていないこともあること

などをあげることができます.
こうした状況の中で,本日本医療情報学会では,緊急の課題である医療情報技術の専門的人材の育成に取り組み,医療情報技師能力検定試験制度を発足させました.

2.医療情報技師の育成
 医療情報技師とは,
「保健医療福祉専門職の一員として,医療の特質をふまえ,最適な情報処理技術にもとづき,医療情報を安全かつ有効に活用・提供することができる知識・技術および資質を有する者」
と定義されます.

 具体的には,日々の診療業務に関わる保健医療福祉情報システムの企画・開発および運用管理・保守を仕事とし,保健医療福祉の現場を知り,そこで活躍することができる情報処理技術者をいいます.情報処理技術のみならず,医療情報システムに関する知識と保健医療福祉のあらゆる分野の業務と関連知識を修得する必要があり,そのような多岐にわたる知識や技術を修得するには,基礎知識の上に相当の実務経験が必要とされます.

 医療情報技師の育成は,その役割から,以下に示すように「初級の医療情報技師」,「上級の医療情報技師」と「医療情報部門管理者」に分けて取り組むことにしております.

1) 初級の医療情報技師(Healthcare Information Technologist : Healthcare IT)
上級職の指示・指導の下に,日常的なシステム運用と企画構築に参画します.すなわち,システム上のトラブル等に対しては,マニュアルなどを参照して対処できること,システムの構築・改善に関しては,保健医療福祉専門職,情報技術専門職と協力し現状調査や企画等に当たる共通的な認識を持っていること,また上級職の支援ができること等が必要です.このための基本的な情報処理技術および医学・医療に関する基本知識を有する人です.

2)上級の医療情報技師
医療情報部門管理者を補佐し,医療情報システムに関する専門的観点から,システム運用と企画構築を担います.すなわち,保健医療福祉における情報ニーズを見出し汲み上げ実現すること,情報システムの企画,開発と運用管理について専門職種間の調整ができること,蓄積データから新しい知見を見出せること,さらに複雑な情報処理技術的な問題に自立して対処できること等が必要です.これらの能力を総合して,保健医療福祉の質の向上と,組織機関の合理的経営の支援を担える人です.

3)医療情報部門管理者
医療情報部門の長として医療機関の経営に参画し,内外における保健医療福祉の情報化の組織的推進を総括的に担います.すなわち,医学・保健医療福祉,医療情報処理技術に関する広い経験と知識を背景として目標設定と戦略立案ができること,それに資する情報活用と必要な医療情報システムの企画構築および評価に,情報倫理に基づく総合的判断ができること,それにより組織機関の長と現場の双方に適切な提言と助言を行うこと等が必要と考えられます.これらの能力を背景に保健医療福祉の質の向上と,組織機関の合理的経営の組織的推進を担う人です.

 当面は初級の医療情報技師向けの能力の到達目標と具体的行動目標を示し,実務者,学習者の能力を認定します.長期的には,認定された初級の医療情報技師が,実務経験を積みながら学習を深める生涯教育を実施し,より上級の専門職としての医療情報技師の能力認定制度を確立することを目指しています.

3.医療情報技師に求められる能力
 オーダエントリシステムや電子カルテ,物流・経営管理,患者アメニティのための情報提供,医療評価などの医療現場における情報ニーズを満たし得る医療情報システムは,現在では医療の提供に必要不可欠の要素となっています.電子カルテなど全院的な診療データを統括する医療情報システムにおいては,情報セキュリティの侵害は,医療施設に,社会的信用低下,業務の遅滞,多大な復旧労力などの被害を与え,患者側にも多大な損害を与えることになります.またシステムの障害や性能劣化は,業務に少なからぬ影響を与えます.稼働時の故障率を最小にし,エンドユーザに常に快適な操作環境を保証する努力が不可欠ですし,機器,環境,人的要因を分析し,障害,性能劣化への対策を講じることが医療情報システム運営上の重要課題です.

 こうした役を担う医療情報システムの担当者は,情報システムを扱う技術,医療情報を扱う知識と意思決定に至る思考能力,および医療情報を扱う資質を必要とします.日本医療情報学会では「医療情報技師」育成のために,学習目標と体系的な育成カリキュラムを確立しました.医療情報技師として求められる知識と技能は図1に示しましたように「情報処理技術」,「医学・医療」および「医療情報システム」の3領域からなります.
 さらに必要な資質として,Communication,CollaborationおよびCoordination(医療情報技師の3C)が挙げられます.
3領域の知識・技能の到達目標と具体的行動目標は、次のように考えられます.

1) 情報処理技術に関すること
医療情報技師として,単独で医療情報システム運営管理現場の日常的実務を担当するために必要な情報処理に関する知識と技術力を備え、上級職の実務を補佐できるだけの力を備えている人で,具体的には次の通りです.

・ 基本的な情報通信技術(IT)を理解し利用できる.例えば,近年のハードウェア,ソフトウェアの基礎知識があり,ユーザ研修の指導ができる,または指導を補佐できる.
・ 医療機関等においてLANの運用管理を支援できる.たとえば,ネットワーク技術の基礎的知識を持ち,実際に基本的な設定ができる.
・ 医療機関等においてセキュリティ対策全般を補佐できる.たとえば,情報セキュリティやリスク分析の基礎を理解しており,ウイルス対策ができる.
・ 業務用データベースに携わることができる.たとえば,SQLの知識を持ち実際に基本的なデータベースを作成できる.
・ 情報システムの分析・設計・開発を支援できる.たとえば,設計技法の基礎知識を持ち,要求定義書の作成を補佐し,医療機関内の技術者はメーカの技術者と議論できる.
・ システムの運用・保守を担当または補佐できる.たとえば,システム保守の基本的な管理を担当できる.

2) 医学・医療に関すること
医療専門職の一員として,医学に関する一般教養的な知識,保健医療福祉制度,および医療サービス業務に関する基本的知識を有しており,正しく行動できる人で,具体的には次の通りです.

・ 他の医療専門職との円滑な対話ができるために,基本的な医学用語,および医療制度に関わる用語を正しく理解し,使うことができる.
・ 医療に関する基本的な法制度を知り,医療機関の施設的要件と各医療専門職種の権限義務および責任範囲を説明できる.
・ 基本的な人体の構造と臓器機能とその病態病理,および国際標準疾患分類の構造を説明できる.
・ 臨床現場でのさまざまな疾病を持つ患者さんの受け入れから,社会復帰にいたる一般的なプロセスを理解し説明できる.
・ 外来および入院医療における診断・治療および看護の一般的な過程を理解し,説明できる.
・ 医の倫理・患者の人権・尊厳に関する問題を理解し,説明できる.
・ 病院をはじめとする医療機関の一般的な組織・機能を理解し,医療専門職の任務とそれぞれが所属する部門の役割を説明できる.
・ 地域における保健医療福祉の連携を理解し,その意義を説明できる.
・ 医療保険,老人保健,介護保険制度などの社会保障制度の基本的事項を理解し,その社会的意義と運用の実態を説明できる.
・ 医療に関わる個人情報の収集,蓄積,伝達,情報開示および利用について,医療専門職の義務責任を理解し,具体的事象について正しい行動の判断できる.

3) 医療情報システムに関すること
保健医療福祉の現場で稼働する情報システムの企画開発・運用保守を担当する技術者や管理者として,医療情報システムに関する実務的な基礎知識,基礎技術力を身につけ,適切な対応ができる人で,具体的には次の通りです.

・ 患者情報など健康に関する個人情報の種類およびそれぞれの構造の特性を知り,収集,伝達および利用上の留意点を説明できる.
・ 診療報酬請求情報や医薬材料情報など病院管理に必要な情報の構造と利用の特性を知り,その取扱い上の留意点を説明できる.
・ 医療情報システムの種類,求められる機能の特性を説明できる.
・ 医療情報システムが利用される医療現場の一般的特性を知り,設計開発上の留意点を説明できる.
・ 医療情報システムが利用される医療現場の特性に応じたシステム運用上の留意点を説明し,障害に対して適切に対策を講じることができる.
・ 医療情報システムが利用される医療機関の各部門の要求を知り,総合的な病院情報システムを構築するために部門間の調整を図ることができる.
・ 医療情報システムの利用者に対して操作教育カリキュラムを作成し,実行することができる.
・ 医療情報システムを介する患者個人情報への正しいアクセスおよび利用の管理ができる.

4.保健医療福祉のIT化を担う人材と組織
社会の情報化が進み,医療においても透明性(情報の提供,公開,共有等)が望まれている今日この頃ですが,保健医療福祉機関に対して,

・ 情報公開,診療,管理業務を支える保健医療福祉情報システムの構築とその推進,
・ 有用で質の高い医療情報の活用と提供に対応出来る人材の育成,それを推進する組織体制の確立・強化
・ 地域に開かれた保健医療福祉の質的向上,経営管理体質の改善

等が,わが国の医療改革における緊急課題として求められています.
医療情報システムに関する専門知識を有する専門職が不足しており,それがシステムの有効利用を妨げる要因の一つにもなっているばかりか,大規模な医療情報システムの事故を誘引しかねない要因ともなっています.ますます大規模化し,多様化,複雑化する医療情報システムの,全体として安定し効果的な稼働を確保するには,もはや外来診療部門,病棟や中央診療部門のエンドユーザが個々の組織内で対応できる範囲を超えていることも,改めて認識する必要がありましょう.日々の情報システムの運営には責任がともない,要員も他部門との兼務など組織的に責任を取り難い体制で運営に当たることは許されません.
 今後,医療機関内に医療情報システム運用の担当者として医療情報技術者を有すること,医療機関内における医療情報技術者の待遇の確立を図ること,専門職で構成され実務を担う医療情報システムの運営体制の確立をはかることが必要と考えられます.

   
図1.医療情報技師に求められる知識・技能そして資質
Communication, Cllaboration, Coordination (3C)

【参考資料】


1) 財団法人医療情報システム開発センター編:医療情報技術者の人材の在り方の検討報告書.2002

2) 厚生省健康政策局研究開発振興課医療技術情報推進室監修,財団法人医療情報システム開発センター編:診療録等の電子媒体による保存に関する解説書.1999

3) 井上通敏,森脇 要編:21世紀の病院医療.南江堂,2003

4) 米国医療の質委員会:医療の質.日本評論社,2002

5) (財)日本医療評価機構:病院機能評価統合版 新評価項目解説集.2002

6) 開原成允,樋口範雄編:医療の個人情報保護とセキュリティ.有斐閣,2003

7) e-Japan戦略II,e-Japan重点計画-2003,高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT戦略本部),http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/,2003

8) 保健医療分野の情報化に向けてのグランドデザイン最終報告:厚生労働省,保健医療情報システム検討会,http://www.mhlw.go.jp/shingi/0112/s1226-1a.html,2001

2010-12-02 Thu