概要

 日本医療情報学会は、医療情報に関心を持つすべての研究者および実務担当者の学術交流の場として1983年(昭和58年)に設立されました(「日本医療情報学会設立の趣意」参照)。日本医療情報学会の前身は、1980年に東京で第3回世界医療情報学会(MEDINFO 80)が開催されたのを機に設立された「MEDINFO研究会」です。

 日本医療情報学会は、年に2回の大きな学術集会【日本医療情報学会秋季大会(医療情報学連合大会)、日本医療情報学会春季学術大会(日本医療情報学会シンポジウム)】を開催する他、複数の研究会を傘下に持ち、活発な学術活動を行っています。会員は、医師のみならず、看護師、薬剤師、臨床検査技師、診療放射線技師、事務担当者、病歴担当者、コンピュータ技術者等の多様な職種からなっており、非常に学際的な学会となっています。設立以来、国際医療情報学連盟(IMIA)に加盟する日本の唯一の学会として国際的にも主導的役割を果たしてきました。

日本医療情報学会設立の趣意

 医学とは、疾病の予防・診断および治療を目的として、研究を行う学問である。このために医学は多くの情報を収集し、意思決定を行うという過程を含んでおり、これは、別の言葉でいえば情報の処理に他ならない。

 この過程は、臨床医学のみならず、基礎医学、保健学、医療行政においても、医学教育においても、同様に重要である。この意味において、医学は、その基礎に情報学があると言っても言いすぎではないであろう。最近では、医学、医療における情報科学を専門に研究する人々も次第に多くなりつつある。

 一方、近年の情報科学の発展は、めざましいものがあり、コンピュータ科学の進展と共に、その成果は複雑な社会現象の解明に応用し得るようになった。また、医学特有の要請が、ひとつの引金となって情報科学そのものを変革するような成果も生まれつつある。

 このような情勢を背景として、近年、医学、医療における情報科学を研究する研究者の交流の場の必要性が強く認識されるようになってきた。このため、医療情報を主題とする国際学会やシンポジウムも日本で開催され、なかでも1980年に行われた第3回医療情報学国際会議(MEDINFO 80)はその代表的なものであった。

 すでに、諸外国においては、医療情報学の研究者が独自の学会を組織するようになっており、さらにそれらの団体が International Medical Informatics  Association(IMIA)を組織するに至っている。

 このような状況をわが国の立場から考えると、これまで日本では、研究者の交流の場として、MEDINFO研究会等が存在していたが、これらの研究会のみでは、最近の医療情報学の進歩に対応できないため、これを改組し、ひとつの学会を設立する必要性が叫ばれてきた。

 以上の観点から、ここに日本医療情報学会を設立し、医療情報に関心を持つすべての研究者および実務担当者の学術交流の場とすることを目的とする。

(1982年11月)